11月の木

 秋は美しい紅葉の季節です。万葉集に出ているもみじの歌には、紅葉よりも黄葉という言葉の方が多く用いられています。実際に、山の色どりを見ますと、紅、黄、褐色など実に色とりどりです。


イチョウ(古名ちち)

ちちの実の 父の命(みこと) ははそ葉の 母の命 おぼろかに

 (こころ)尽くして 思ふらむ その子なれやも  (大伴家持 万葉集巻19-4164

 中国原産で古い時代に日本に渡ってきました。落葉性の高木でイチョウ科の植物です。時にはちちと呼ばれる乳房状のこぶが、垂れることがあります。秋には葉が大変美しい黄色になります。雄の株と雌の株があり、雌の株には、ギンナンといわれる果実(種子)ができ食べられます。


モミジ(古名もみち

 背の山に 黄葉(もみち)常敷く 神丘(かむおか)

 山の黄葉は 今日か散るらむ (作者未詳 万葉集巻9-1676

 山地で普通に見られますが、庭園にも栽培されます。秋に葉が赤くなり大変美しい落葉性のカエデ科の植物です。カエデはカエル手の意味で、葉の形がカエルの手に似ているからです。葉がいくつかに裂けているのを、いろはにほへとと数えることからイロハカエデとよばれます。また、京都の高雄山に多いのでタカオモミジといわれることがあります。


ケヤキ(古名 つき)

 天(あま)飛ぶや 軽(かる)の社(やしろ)の 斎槻(いわひつき)

 幾世まであらむ 隠妻(こもりづま)  (作者不詳 万葉集巻11-2656

 山地に生えていたり、人家の周囲に植えられたりするニレ科の落葉高木で、高さ30mにもなります。春に新葉とともに淡黄緑色の細かい花を開きます。果実はゆがんだ平たい球形です。秋の紅葉は美しいです。材質が良いため建築や家具など用途が広いです。


エノキ(古名 え)

 

 わが門(かど)の 榎(え)の実もり喫(は)む 百千鳥(ももちどり) 

  千鳥は来れど 君ぞ来まさぬ (作者不詳 万葉集巻16-3872

 山林に生えるが、道路わきなどにも植えられるニレ科の落葉高木です。大きいものは高さ20mにもなり、多く分枝し夏によく茂りよい木陰をつくります。春に淡黄色の細かい花を開き、果実は橙色に熟し小鳥がよく食べに来ます。秋には葉は黄色に色づき落葉していきます。


クヌギ(古名 つるばみ)

 つるばみの 衣(きぬ)(と)き洗ひ 真土山(まつちやま)

 本(もと)つ人には なほ如(し)かずけり (作者不詳 万葉集巻12-3009

山野に多いブナ科の落葉高木です。枝は多く葉は茂り高さは17mぐらいにもなります。樹皮には深い裂け目ができます・葉はクリに似ていますが、葉のまわりのきょ歯の先端に葉緑体がありません。果実はほぼ球形でドングリと呼ばれています。果実の 煎汁で衣服を黄褐色に染められます。秋には葉は黄色や褐色に色づきます。


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