12月の実


シ イ(古名 しひ)

 

家にあれば 笥(け)に盛る飯(いひ)を 草枕(くさまくら)

         旅にしあれば 椎(しひ)の葉に盛る (有間皇子 巻2−142)

暖地の山中に生えるブナ科の常緑高木です。葉の裏面は淡褐色で、6月頃強い香りを放つ黄褐色の小さい花をつけます。翌年の10月頃果実が熟し種子は食用にします。果実の丸く小さいコジイ(ツブラジイ)と果実の長いナガジイ(スダジイ、イタジイ)があります。


 コノテガシワ(古名 このてがしは) 

奈良山の このてがしはの 両面(ふたおも)

かにもかくにも 倭人(かだひと)の徒(とも)消奈行文(しょうなのぎょうもん)巻16−3836

  中国原産で今から約200年前に日本へ渡来したヒノキ科の常緑樹です。葉はヒノキに似ているが、子どもが手のひらを合わせたように立っているので、コノテガシワとよばれます。春に開花し、若い果実は青緑色で不規則な凹凸があります。


 コナラ(古名 こなら)

下毛野(しもつけの) 美可母(みかも)の山の 小楢(こなら)のす

              ま麗(ぐわ)し児(こ)らは 誰(た)が笥(け)か持たむ(作者未詳 巻14−3424)

 各地の山地に普通に見られるブナ科の落葉高木です。幹は直立して大きいものでは高さ17mにもなります。5月頃尾のような花穂をつけ無数の黄褐色の花が咲きます。晩秋には葉が黄色または紅色になり、果実は細長い形をしています。


カクレミノ(古名 みつながしは)

 万葉集巻2−90に、「やまたづ」の歌「君が行き………・・」があり、後書きに「みつながしは」というのがあります。みつながしはについて、フユイチゴ説、マルバチシャノキ説、オオタニワタリ説等あるが、松田修氏はカクレミノ説を主張しています。その根拠は「カクレミノについては、紀州採薬記にカクレミノ一名ミツバガシハ、一名ヤマトミツデの名がある。これはカクレミノが若い時の葉が多く三裂または五裂していて、ミツデ、ミツバガシハなどの名が出たもの」です。カクレミノは、暖地沿海地帯に特に多く自生し、夏に黄緑色の花をつけ、果実は熟すと黒くなります。


アキニレ(古名にれ)

おし照るや 難波(なには)の 小江(をえ)に いほ作り…

 あしひきの この片山(かたやま)の もむ楡(にれ)を…(長歌)(ほかひびとの詠 万葉集巻16-3886)

 山地や平地に生える落葉高木のニレ科の植物であす。秋になると、淡黄色の小花がむらがってつきます。果実は扁平な楕円形で、なかに種子が入っています。秋に花が咲くのでアキニレの名がつけられ、春に花の咲くハルニレと区別されています。


シラカシ(古名しらかし)

 

あしひきの 山道(やまぢ)も知らず しらかしの

 枝もとををに 雪の降れれば (柿本人麿 万葉集巻10-2315

 山地に自生する常緑高木のブナ科の植物です。4月ごろ雄花は尾状花穂で垂れ下がり、雌花の穂は直立します。果実は楕円形です。材が白色であるのでシラカシの名があります。


アラカシ(古名 かし)

静まりし 浦浪さわく わが背子(せこ)

 い立たせりけむ いつかしが本(もと) (額田王 万葉集巻1-9

  山野に普通の常緑のブナ科の高木です。樹皮は暗緑色を帯びた灰色で裂け目はありません。葉の表面にはつやがあります。4月頃に雄花の尾状の花穂をつけ、上部に雌花をつけます。秋には楕円形のかたい果実ができます。また、庭樹や生け垣として庭園に植えられたり、材はかたく木炭としても利用されます。


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