3月の花


ミツマタ(古名 さきくさ)

春されば まづ三枝(さきくさ)の 幸(さき)くあらば 

後にも逢はむ な恋ひそ吾妹(わぎも) (柿本人麿 万葉集巻10-1895)

 中国から渡ってきた落葉の低木で、ジンチョウゲ科の植物です。秋の終わりごろ、枝の先につぼみがつき、春になると黄色の小花が咲きます。枝が三本ずつに分かれているので、ミツマタの名がついています。樹皮は強く良質で和紙の原料になります。また、現在の千円札などの原料の一つです。


 アセビ(古名 あしび)

磯かげの 見ゆる池水 照るまでに

咲ける馬酔木(あしび)の 散らまく惜しも (甘南備伊香真人 万葉集巻20-4513

 山地に生えるツツジ科の常緑低木です。早春に枝先に多数の白色でつぼ状の花をつけます。果実は偏球形です。有毒植物であり、葉を煎じて野菜の殺虫剤に使うこともあります。また、馬が葉を食べると苦しむので馬酔木とも言われます。花びらが純白で米粒のようなのでコメシバと言われたり、液汁が苦味があるのでニガキと呼ばれたり、煎汁で牛を洗って虫を駆除するのでウシアライとも言われたりします。


ヤドリギ(古名 ほよ)

あしひきの 山の木末(こぬれ)の 寄生(ほよ)取りて

挿頭(かざ)しつらくは 千年寿(ちとせほ)くとそ (大伴家持 万葉集巻18-4136 

 エノキ、サクラ、クリなどの広葉樹に寄生するヤドリギ科の寄生植物です。紀伊風土記の丘では、ポプラ(ヨウシュヤマナラシ)に珍しく寄生しています。2月頃黄色の小さい花をつけます。晩秋に果実は淡黄色に熟し、半透明で粘汁があります。小鳥がこの果実を食べると粘ったふんをし、他の木に粘りつくとそこで発芽します。


ヤマアイ(古名 やまあゐ)

 級照(しなて)る 片足羽川(かたしはがは)の さ丹塗(にぬり)

 大橋の上ゆ 紅(くれなゐ)の 赤裳裾引(あかもすそひ)

山藍(やまあゐ)もち 摺(す)れる衣着て…・

(高橋蟲麿 万葉集長歌 巻9−1742)

 山地や木の下に生えるトウダイグサ科の草本で、茎は細長く直立します。早春に緑色の小さい花を穂状につけます。昔はこの生の葉をついて汁をとり、衣を染めました。藍染(あいぞ)めに使う栽培種のタデアイ(タデ科)に対して、山に自生するのでヤマアイの名がついています。


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