赤櫃(あかびつ)

赤櫃は、和歌山の農村で結婚式やお祭りなど、慶事や行事に使われた赤い漆塗りの丸櫃です。直径が50センチほどあり、基本的に二個を一対にして使用され、中にお米やお餅を入れました。



 かつて行われた和歌山地域の農家の婚礼では、親戚が祝儀として赤櫃に白米と小豆を入れ、二つの櫃を一荷として天秤棒に担いで運び、婚家に贈る風習がありました。贈られた家では、これで赤飯を作って宴席に饗し、近所へも配りました。

 また、機械化されない頃の田植えは、イニ(結)などと称して近隣の農家が協力しあって作業を行っていましたが、田植えの昼飯には、田の主人が赤櫃にたくさんの握り飯を入れて運び、手伝いに来てくれた人たちへ振る舞うことも行われました。
 お祭りなどでも、赤櫃にたくさんの丸餅を入れ、天秤棒や担い棒に担いで神社やお寺に運び入れ、お餅を神仏にお供えしました。行事の後には、お下がりの餅を集まった人びとへまく「餅まき」を行って祝いました。

 このように赤櫃は、お米にまつわる祝いや祈りの意味を表した和歌山ならではの道具ですが、現在は生活スタイルが変わるなかで出番がすっかり少なくなっています。


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