1月の果実
サカキ(古名 さかき)
ひさかたの 天(あま)の原より 生(あ)れ来(きた)る
神の命(みこと) 奥山の賢木(さかき)の枝に…… (長歌 坂上郎女 巻3−379)
吾妹子(わぎもこ)に あふちの花は 散りすぎず
今咲ける如(ごと) ありこせぬかも (作者未詳 巻10−1973)
皇神祖(すめろき)の 神の命(みこと)の……み湯の上の 樹群(こむら)を見れば
おみのきも生ひ継ぎにけり……… (山部赤人 巻3−322)
イヌビワ(古名ちち)
ちちの実の 父の命(みこと) ははそ葉の 母の命(みこと)
おぼろかに 情(こころ)尽くして 思ふらむ その子なれやも…
(大伴家持 長歌 万葉集巻19-4164)
落葉高木のクワ科の植物で、春には、枝上の新葉の付け根から花柄を出し、先端に球形の花の入った袋状のものをつけます。果実は成熟すると紫黒色となり、食べることがあるが美味ではありません。果実がビワに似ているが、小形で質が悪く人間の食べるものでないという意味で、名前に犬(イヌ)をつけています。また、果実が乳首に似て樹液が白く乳のようなので、ちちの名がついています。
スギ(古名すぎ)
古(いにしへ)の 人の植ゑけむ 杉が枝(え)に
かすみたなびく 春は来ぬらし (柿本人麻呂 万葉集巻10-1814)
日本特産のスギ科の植物で、各地に野生が見られるが、広く栽培もされています。常緑の高木でまっすぐな幹が直立しているので、直木(スキ)からスギと呼ばれるようになったと言われています。
ヤブコウジ (古名:やまたちばな)
あしひきの 山橘の色に出でよ
語らひ継ぎて 逢うこともあらむ (春日王 万葉集巻4-669)
小形の低木で、ヤブコウジ科の植物です。夏に白い花を咲かせ、その後、赤い果実をつけます。木陰にあって目立ちにくいのですが、日の光を受けると、赤い顔をのぞかせます。
ヤブラン (古名:すが)
妹がため 菅の実採りに 行くわれは
山路にまとひ この日暮しつ (柿本人麻呂 万葉集巻7-1250)
木陰に株をなして生えるユリ科の植物です。夏に紫色の小さい花が咲き、その後、黒い果実をたくさんつけます。やぶに生えることもあり、葉がランに似ているので、ヤブランの名がついています。
サネカズラ(古名 さなかづら)
玉くしげ みむろの山の さなかづら
さ寝ずはつひに ありかつましじ (藤原鎌足 万葉集巻2-94)