7月の花
ネムノキ(古名 ねぶ) マメ科
昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る ねぶの花
君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ (紀女郎 万葉集巻8-1461)
落葉高木で、夏に小枝の頂きから花柄を出し、淡い紅色の細い房状の花が咲きます。おしべが多数で細い糸状で長く美しいです。葉は夜間に閉じ、睡眠しているようなので、ネムの名がついています。
朝顔は 朝露負ひて 咲くといへど
夕影にこそ 咲きまさりけれ (作者不詳 万葉集巻10-2104)
山地や原野に生えますが、鑑賞のため栽培されることもあります。夏から秋にかけてつりがね形の青紫色の目立った花を咲かせます。白花や二重咲きなどの園芸品もあり、根は薬用にされます。
ナツメ(古名 なつめ)
玉掃(たまばはき) 刈り来(こ)鎌麿 室(むろ)の樹と
なつめが本と かき掃(は)かむため (長忌寸意吉麿ながのいみきおきまろ 万葉集巻16-3830)
ヨ−ロッパ南部、アジア西南部原産でクロウメモドキ科の低木です。小枝は一つの節に2〜3本つきます。初夏に淡黄色の小花をつけます。果実は楕円形でなめらかで、食べられるので人家に栽培されます。初夏にようやく芽をだすので、ナツメ(夏芽)とよばれます。
フトイ(古名 おほゐぐさ)
上毛野(かみつけの) 伊奈良の沼の おほゐぐさ
よそに見しよは 今こそ勝れ (作者不詳 万葉集巻14-3417)
池や沼の中に大群をなして生えるカヤツリグサ科の草本です。茎は長さ1.5〜2mぐらいになります。夏から秋にかけて黄褐色の小穂をつけます。草たけの大きいイということから、フトイと名づけられます。
サンカクイ(古名 しりくさ)
湊葦(みなとあし)に 交れる草の しり草の
人皆知りぬ わが下思ひは 柿本人麻呂歌集(巻11−2468)
原野の湿地に生えるカヤツリグサ科の草本です。地中に広く長い地下茎を引き、よく繁茂します。茎の断面は三角形をなし、葉は変形してさやとなり茎の下部を包みます。夏秋の頃,茎の頂きに褐色の小さい穂をつけます。この植物でむしろをつくることがあります。