8月の花


ツユクサ(古名つきくさ)

(もも)に千(ち)に 人は言ふとも つきくさの

移ろふ情(こころ) われ持ためやも  (作者不詳)

 道端や荒地に自生するツユクサ科の草本です。夏に青色の花をつけます。花の色からアオバナとも言われます。花から青色の染料をとります。朝露にぬれて花が咲くのでツユクサの名がついています。


ヒオウギ(古名ぬばたま)

(いにしえ)に 妹とわが見し ぬばたまの

黒牛潟(くろうしがた)を 見ればさぶしも (柿本人麿 万葉集巻9-1798)

 山地の原野に生える草本で、アヤメ科の植物です。花が美しいので、観賞用としても栽培されます。扇形に並んだ2列の緑の葉をつけます。夏に茎が何度も枝分かれし、黄赤色で内面に暗紅点のある花を咲かせます。檜の薄板でつくる檜扇(ひおうぎ)に、葉が似ているので、ヒオウギの名がついています。黒牛潟は、現在の黒江湾(海南市)をさします。


セリ(古名 せり)

 

大夫(ますらを)と 思へるものを 太刀(たち)はきて

かにはの田居(たゐ)に 芹子(せり)そ摘みける (せち妙観命婦(せちみょうかんみょうふ) 万葉集巻20-4456)

 湿った所や溝の中によく生育するセリ科の草本です。春に盛んに生長し、春の七草の一つになっています。夏には白い小花がコデマリのように集まって咲きます。葉にはかおりがあり食用にされます。新苗がたくさん出る有様が競り合っているように見えることから、セリと呼ばれるようになったといわれています。


ハマユウ(古名 はまゆふ)

み熊野の 浦の浜木綿(はまゆふ) 百重なす

心は思(も)へど 直(ただ)に逢はぬかも   (柿本人麿 万葉集巻4-496)

 暖地海岸の砂地などによく生える大形のヒガンバナ科の草本です。葉が厚く幾重にも重なり、浜の強い潮風にも耐えています。夏には葉の間から花茎を出し、先に白い花が集まって傘形に咲きます。浜辺に生えオモトに似ているので、ハマオモトの名もついています。


ヘクソカズラ(古名 くそかずら)

 かはらふぢに 延(は)ひおぼとれる くそかづら

 絶ゆることなく 宮仕(みやづかへ)せむ  (高宮王 万葉集巻16−3855)

 山野によく生えるつる性のアカネ科の植物です。茎は長く伸び、葉は対生し独特のにおいがあります。夏にアサガオの花を小さくしたような白色の花を咲かせ、その中心部が紅紫色のかわいいものです。花の中央がお灸のあとに似ているので、ヤイトバナの名もあります。


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