和歌山県紀伊風土記の丘

常設展示

旧石器時代の和歌山-ナイフ形石器の文化-


 旧石器時代には、人々は狩りなどのために石材などを用いてさまざまな道具をつくり使っていた。旧石器時代の遺跡は和歌山県内で20か所以上が確認されている。
 旧石器時代の人々の暮らしに関わるナイフ形石器や掻器(動物の皮などをなめす道具)、削器(切る・削ぐ道具)、狩りの対象であったとみられるナウマン象の歯などがみつかっている。

代表的な展示資料)ナイフ型石器【吉田遺跡(岩出市)、府中遺跡・西庄地区遺跡(和歌山市)など】、ナウマン象臼歯【加太沖海底(和歌山市)】など

 

縄文時代の和歌山-縄文土器の世界-

 
 縄文時代は土器が使われ始めた時代で、人々は狩猟や漁撈などを生業としていた。この時代の遺跡は和歌山県内で約200か所分布し、なかでも鳴神貝塚(和歌山市)は近畿地方で初めて発見された貝塚(当時のゴミ捨て場)として有名である。
 県内では多様な土器が発見されており、早期の押型文土器である高山寺貝塚(田辺市)出土の「高山寺式」や、鷹島遺跡(有田市)出土の爪形の文様や粗い縄文を特徴とする中期の「鷹島式」などは、西日本に広く分布しており、人々の活発な交流を示している。

代表的な展示資料)土偶・石鏃【川辺遺跡(和歌山市)】、縄文土器【高山寺貝塚(田辺市)、鷹島遺跡(広川町)】、石棒【太田・黒田遺跡(和歌山市)】、貝類【鳴神貝塚(和歌山市)】など

  

弥生時代の和歌山-米づくりのはじまり

 
 弥生時代は、本格的な米作り(水田稲作)や、鉄や青銅器の使用が始まった時代である。和歌山県内では、この時代の遺跡が約400か所以上が分布している。
 前期には、縄文時代の伝統を残す突帯文土器や呪術用の石棒などが使用される一方、遠賀川式土器や石庖丁、木製農耕具など、農耕文化の到来を示す道具も確認され、早くから米づくり(水田稲作)を受け入れていたことがわかる。また、さまざまな地域の土器などが発見されており、海路を通じた東西文化交流の交差点的な役割を果たしたとみられる。

代表的な展示資料)木製弓・農耕具・土器【立野遺跡(すさみ町)】、石庖丁・銅鐸・弥生土器【太田・黒田遺跡(和歌山市)】、鉄製ヤリガンナ・鉄斧【船岡山遺跡(かつらぎ町)】、鳥形土製品・銅鐸型土製品【岡村遺跡(海南市)】など


  

古墳時代の和歌山-紀伊の古墳-

 
 県内には4世紀後半から7世紀にかけて1,600基以上の古墳が築造されている。古墳時代前期から中期には、秋月1号墳(和歌山市)や下里古墳(那智勝浦町)、山崎山5号墳(海南市)、車駕之古址古墳(和歌山市)などの前方後円墳が築かれる。副葬品は、阪東丘2号墳(御坊市)から出土した二神二獣鏡等の銅鏡や武器・武具、装飾品があり、また大谷古墳(和歌山市)の馬冑に代表される朝鮮半島との密接な交流を示すものも含まれる。
 古墳時代後期には、岩橋千塚古墳群での古墳の築造が活発となり、この地域特有の岩橋型横穴式石室が構築される。また、その他の地域でも、円墳などに横穴式石室が構築され、鳴滝1号墳(和歌山市)では環頭大刀や馬具、子持ち勾玉など豊富な副葬品が出土している。


代表的な展示資料)鳥形土器・土製円盤・滑石製品【大日山Ⅰ遺跡(和歌山市)】、須恵器【楠見遺跡(和歌山市)】、須恵器大甕【鳴滝遺跡(和歌山市)】、製塩土器・鹿角製品・鉄製釣針【西庄遺跡(和歌山市)】、須恵器・青銅製剣【山崎山5号墳(海南市)】、農耕具・木製品【鳴滝Ⅱ遺跡(和歌山市)】など



  

岩橋千塚古墳群

 
 岩橋千塚古墳群では、4世紀末頃に古墳の築造が開始され、6世紀前半には大日山35号墳にみられるように造出に豊富な埴輪を樹立し、岩橋型横穴式石室をもつ大型前方後円墳が築造される。6世紀後半には、石室髙が全国で2番目にもなる天王塚古墳が築造される。しかし、6世紀末から7世紀初頭には前方後円墳は築られなくなり、井辺1号墳のような方墳が築造された。

代表的な展示資料)重要文化財:両面人物埴輪・翼を広げた鳥形埴輪・胡籙形埴輪・家形埴輪・人物埴輪  金銅製品・馬具・玉類【大日山35号墳(和歌山市)】石見型埴輪・円筒埴輪【前山A58号墳(和歌山市)】、金銅製品・玉類・須恵器【天王塚古墳(和歌山市)】など


  

古代の和歌山

 
 古代の和歌山は「紀伊国」と呼ばれた。飛鳥時代の7世紀後半を中心に、紀ノ川に沿って古代寺院が建立される。古代寺院は、県内で15か所以上が確認されており、伊都郡は川原寺系、那賀郡は坂田寺系、名草郡は法隆寺西院系の軒瓦を有するなど特徴的な瓦の分布を示す。
 8世紀の奈良時代には、聖武天皇の勅願により紀伊国分寺跡(紀の川市)に創建され、発掘調査により金堂、塔、講堂、鐘楼、中門、回廊が確認されている。

代表的な展示資料)軒丸瓦・軒平瓦【上野廃寺(和歌山市)・神野々廃寺(橋本市)】、軒丸瓦・軒平瓦・鬼瓦【佐野廃寺(かつらぎ町)】、鬼瓦【紀伊国分寺(紀の川市)】など

  

中世の和歌山-中世根来寺の繁栄-

 
 根来寺遺跡からは、発掘調査により南大門、旧円明寺、半地下式の倉庫、湯屋などの遺構が極めて良好な状態で発見されている。大量の中国製磁器や国産陶磁器、密教の修法で用いられた法具、武器や武具、生活用品など、その繁栄ぶりを示す13世紀から16世紀を中心とする様々な遺物が出土している。

代表的な展示資料)陶磁器・備前焼大甕・漆塗椀・小刀・密教法具など【根来寺遺跡(岩出市)】



  

和歌山の民俗


 民俗展示コーナーでは、和歌山でかつて使われた灯明台やランプ・行燈などの照明具や火のしやアイロンなど衣生活用具、食器やすし箱など食生活、階段箪笥や車長持など、衣食住にまつわる生活用具を中心に展示している。
 また庶民の祈りが込められた郷土玩具は、農山漁村の日常的な仕事を模したものや、子どもの成長を祈るもの、紀州の歴史や伝承からイメージされた観光土産などが作られるなど、紀州の風土が色濃く反映されている。
 このほか1階ピロティーでは、和歌山平野の農業用水路において昭和30年代まで使われた「踏み車(揚水車)」などを展示している。
代表的な展示資料)
ランプ・行燈・すし箱・弁財天船模型・踏車・郷土玩具・ハーモニカ箪笥など